頭をよくするには、脳の特徴を知り上手に使うことが大切です。しかしながら脳についての研究はまだ浅く、まだ分からないことが多いようですが、それでも、さまざまな研究の結果を見ると、私たちの脳は、非常にすぐれた能力を有しているようです。脳細胞の特徴を見ていきましょう。
私たち人間の脳は、およそ数千億個の「脳細胞 (ニューロン)」でできあがっており、それらは神経線維を伸ばしています。
たとえば、これは脳細胞の写真ですが、ここに写っている脳細胞の数はいくつだと思いますか?
すごく細かく分岐しているので、たくさんの細胞が写っているように思えるかもしれませんが、実は、この写真に写っているのは、たった1個の脳細胞なのです。
脳細胞からは、多数の神経線維が伸びており、これらが、他の細胞の神経線維と連絡しあって、ネットワークを形成しているのです。
脳細胞同士は、脳内化学物質をお互いに交換します。脳内化学物質のやり取りが行われることで、脳内で信号が伝わり、情報伝達が行われます。
これが、「頭が働く」ということの正体なのですね。
数千億個の脳細胞が、巨大なネットワークを構築していることを想像すると、私たちの脳というのは、とてつもない可能性を秘めているなと思いませんか? そのネットワークの複雑性というものは、おそらくインターネットの比ではないでしょう。
そんな素晴らしい仕組みを、私たちは誰もが持っているのです。
一方で、脳細胞は、一定の年齢以降は、数が減少していくことも知られています。
ところが、脳細胞の数は減少しても、頭の働きにはあまり影響はないのだそうです。
どれだけ、強固で複雑な脳内ネットワークを持っているかが、頭の働きには重要なのであり、脳細胞そのものの数は関係ないらしいのです。
ということは、年齢とともに脳細胞は減ってしまっても、まだまだ頭を鍛えることはできるということですね。
ご高齢でも本当に頭がよくて、素晴らしい仕事をしていらっしゃる方々がいらっしゃいますが、おそらく、この方々は、強固で複雑な脳内ネットワークを作ってこられたのでしょうね。
では、どうすれば強固で複雑な脳内ネットワークが作られるのかというと、これは、やはり「頭を繰り返し使う」ということになりそうです。
脳細胞同士のネットワークは、最初からできているわけではなく、徐々に作られていきます。脳細胞は生きており、常に「つながり」を求めて、神経線維を伸ばしながら探索しています。神経線維を伸ばしていっても、「こちらには、関係しているところはなさそうだ」と思うと、また別の方向に向けて探索を始めます。
このようにして、脳細胞はどこかに「つながり」を発見すると、そこに新しい道を開通させるように、新しいネットワークの道を生み出します。しかし、この「つながり」も、一度つながっただけでは強固なものにはなりません。
何度も繰り返し同じ道を通るうちに、「つながり」は強固になり、それにつれてスピードも上がるのだそうです。つまり、頭をよく使い、繰り返し学ぶことで、スピードのある、「よく働く頭」の脳内ネットワークを作ることができるのですね。
「自分は凡人だ」という人であっても、みな同じ数の脳細胞を持って生まれてきています。頭をよく繰り返し使うことで、天才と同じように素早く頭を働かせられるようになれる可能性はあるのかもしれませんね。
頭を繰り返しよく使うことで、私たちは自分の頭をもっと上手に働かせられるようになり、自分の脳をますます開発していけそうです。
では、どうやって頭を使うかですが、マインドマップを使うと良いでしょう。
マインドマップは、頭の中を「見える化」するツールですから、マインドマップを使うことで、考えることがラクになり、考え続けることができるようになります。
今まで以上に頭をよく使い、自分の脳の可能性を開いていきましょう!
脳を右脳と左脳に分けて捉える考え方は、よく知られていますが、そのほかには、ポール・マクリーンの「三位一体脳説」というものも知られるようになってきました。
「三位一体脳説」では、脳を図のように縦割りの断面にして、それぞれの部位の役割を規定しています。
もちろん、脳は、3つの部位しかないわけではありませんが、この図では、「大雑把に脳を捉えると、3つに分けられる」と考えています。
脳の一番内部にあるのは、「脳幹」です。
ここは、爬虫類にもある部分ということで、「爬虫類脳」とも呼ばれており、主に「反射」を司ります。
たとえば、びっくりすると、身体が自然と縮まりませんか? こういった反応は、無意識に行われているもので、脳幹が司っている反射です。
脳幹の周りにあるのが、「辺縁系」です。
ここは、哺乳類にもある部分なので、「哺乳類原脳」と呼ばれ、主に「情動」を司ります。
楽しい、嬉しい、嫌だ、悲しい、といった気持ちは、辺縁系の機能によって起きているのですね。
一番外側にあるのが、「大脳新皮質」です。
ここが、人間らしい脳の部分で、「思考」を司っています。
さらに、大脳新皮質は、右脳と左脳に分かれており、それぞれの働きが異なるということを、ノーベル賞を受賞したロジャー・スペリーが発見しました。
さらに、三位一体脳説では、この3つの部位はバラバラに働いているわけではなく、連動しているとしています。
脳幹が、反射で身体を固めてしまっているような時には、辺縁系は、「嫌だ」という気持ちになり、何をする気もなくなっています。こんな時には、大脳新皮質も働きませんので、考えることや学習することは、難しい状態です。
上司が、カリカリして、ガミガミと部下を叱りつけてばかりいる会社では、部下たちの仕事能率も上がらないというのは、脳の機能からして当たり前のことなのですね。
一方で、脳幹がリラックスして身体を緩ませているような時には、辺縁系は「楽しい」、「嬉しい」という気持ちになりやすく、さまざまなことへのやる気も湧きやすい状態になっています。
こんな時には、右脳、左脳とも活発に動き、大脳新皮質は、その機能を最大限に発揮しやすくなっています。
つまり、頭を上手に使って、生産性を上げたり、学習の能率を上げたりしたいと思ったら、まず、この2つの大事なことを忘れないようにしましょう。
仕事をする時でも、勉強をする時でも、最高の紙を用意し、自分の好きなペンを何色も用意してみてはどうでしょうか。
部屋には緑を置き、陽の光の差し込む気持ちいい場所で、カラフルで落書きの入ったマインドマップでノートを取れば、自然と脳が働いてくれますね。
1981年、アメリカの神経心理学者であるロジャー・スペリーは、研究の末、右脳と左脳が別々の働きをしていることを発表し、ノーベル賞を受賞しました。
最近では、自分のことを、「私は右脳型」、「私は左脳型」などと表現する人も増えており、右脳と左脳が違う働きをしていることは、多くの人がご存知なのではないでしょうか。
実は、この右脳と左脳ですが、脳の中でも一番外側にある「大脳新皮質」の右側と左側のことを言っているのです。大脳新皮質は、人間ならではの脳。人間らしい「思考」を司る脳です。
さあ、それでは、右脳と左脳、それぞれのはたらきを見ていきましょう。
左脳は、主に次のものを使うことが得意だと言われています。
一方、右脳は、次のことが得意だとされています。
さあ、あなたは右脳と左脳、どちらの方をよく使っていますか?
もし、どちらかに偏って使っているとしたら、使っていない方の脳をもっと使うようにしましょう。両方の脳を相乗効果的に使うことが、自分の脳の力を最大化し頭をよくするコツです。
人間は、片足では走れないように、実は脳も、右脳と左脳の両方をバランスよく使うからこそ、その機能を最大限に発揮するのです。
マインドマップは、右脳と左脳の双方を活性化させ、頭をよくすることのできるツールです。
ご覧のとおり、言葉や論理といった左脳的な要素も入っていながら、色、形、全体性といった右脳的な要素も盛り込まれています。
マインドマップを毎日活用するば、あなたの右脳と左脳が双方に活性化し、脳がどんどん鍛えられていきますよ!
1991年、マインドマップの考案者であるトニー・ブザンと、チェスのグランドマスター (チェス選手のタイトルで、世界チャンピオンを除いて最高位)であるレイモンド・キーンは、「世界記憶力選手権 (World Memory Championships)」を創設しました。
現在も毎年、世界各地で大会が開催されており、全世界から記憶力を競いに、大勢の人たちが大会に参加しています。
世界記憶力選手権には、10種類の記憶の競技があります。
数字を覚えるものや顔と名前を一致させるもの、図形を覚えるもの、単語の羅列を覚えるものなど、記憶するものの種類はさまざまです。
1時間かけて記憶する競技もあれば、5分間で覚える競技もあります。たとえば、5分間で数字を記憶する競技での世界記録は520桁だそうです。
相当脳を鍛えた人たちが、出場しているのでしょうね。
トニー・ブザンがマインドマップを考案した背景には、記憶に関する研究がありました。
彼は、どうすればもっと頭を上手に使うことができるかについて、若い頃から探求し、自分なりの記憶の法則を見出していました。
その結果生まれたもの、それが「マインドマップ」です。
トニー・ブザンが、世界記憶力選手権を創設した理由には、こんな経緯もあるのです。
ご覧のように、「World Memory Championships」のロゴには、象の姿が配置されています。
実は、英語には「An elephant never forgets」ということわざがあるほど、象は大変記憶力の良い知性的な動物として知られており、記憶の象徴とされることが多いのです。
有名なクラウドサービスの「エバーノート (Evernote)」も、やはり象をかたどったロゴですよね。
さて、象の記憶力は、その脳の発達度と関連性があると言われています。象は、単純に記憶が良いだけでなく、相手に共感する能力や問題解決力も高く、非常に知性的な動物であることが知られています。
人間であっても、記憶力の高さは、問題解決力の高さやコミュニケーション力の高さと関係していそうですね。
記憶を磨くことは、知性を磨くことと連動しているのではないでしょうか。
頭の使い方を研究し続けているトニー・ブザンが、記憶に情熱を傾けるのは、こんなところに理由があるのかもしれませんね。